以前にも書きましたブレーキフルードのお話を改めて。

ブレーキフルードは交換を怠ると事故に直結する恐れのあるもので、
車にとっては最も大切なものの一つです。

ブレーキフルードが劣化するとブレーキが効きにくくなる、
あるいは効かなくなる可能性があります。

それでは具体的に。

ブレーキフルードは使用しているうちに徐々に空気中の水分が混入します。
そして、この水分が悪さをするのです。

ブレーキフルードは水分の含有量が増えるほど沸点が低下してしまいます。

つまり、ブレーキフルードが沸騰しやすくなる訳です。

ところで、下り坂でブレーキを多用した場合にブレーキが熱を持ってしまうと、
ブレーキフルードにはベーパーロック現象、ブレーキパッドにはフェード現象が起きやすい状態になりますが、
ブレーキフルードを交換しないとベーパーロック現象が大変起きやすくなります。

べーパーロック現象をペーパーロック現象と覚えている人がいますが、それは間違いです。
べーパーロック現象のべーパーとは英語のvaporで「蒸気」という意味です。
つまり蒸気によって制動力の伝達がlock「阻害される」ということをさしています。

では、車のブレーキが効かなくなるべーパーロック現象、同じようにブレーキの効きが悪くなるフェード現象についてお話します。

まずはブレーキのしくみについて簡単にご説明しましょう。
車のブレーキでもっとも一般的なのが油圧式ブレーキです。

油圧式ブレーキは、ドライバーがブレーキペダルを踏んだ力がブレーキフルードという液体で満たされた配管を通って伝わり、
ブレーキ内のピストンを押します。
そして摩擦材であるブレーキパッドを押し、
押されたブレーキパッドがディスクローターを両側からはさみこんで(ディスクブレーキの場合)ブレーキ力を得るしくみです。

坂道を下るときなどフットブレーキを使いすぎると、その摩擦熱がブレーキフルードに伝わってブレーキフルードが沸騰し、気泡が発生します。
気泡が発生すると、ブレーキペダルによって発生した油圧がブレーキフルードに伝わらず、ブレーキが効かなくなってしまうのです。

これをベーパーロック現象といいます。

フェード現象も下り坂などでフットブレーキを使いすぎると、走行中にブレーキが効かなくなる現象です。
ブレーキが効かなくなるという点ではベーパーロック現象と同じですが、ブレーキが効かなくなる原因が異なります。

フットブレーキを使いすぎるとブレーキパッドが非常に高熱になり、
摩擦材の熱分解で発生したガス膜がブレーキローターの間にはさまることで摩擦力が減り、ブレーキの効きが悪くなるのがフェード現象です。

つまり、
ベーパーロック現象はブレーキフルードが要因
フェード現象は摩擦材が要因

ということになります。

ベーパーロック現象の方がフェード現象よりも重篤で、ほとんどフットブレーキが効かなくなる恐れがあります。

エンジンブレーキを多用してブレーキを踏む回数を減らしていても十分に起こりえます。

さて、これまでの説明でブレーキフルードの重要性をご理解いただけたでしょうか?

定期的にブレーキフルードを交換していれば、
ベーパーロック現象を予防できたり、
もし起きたとしても軽い症状で済む可能性は十分にあります。

恐ろしい事態が発生しないように、
是非とも車検ごとの交換をおすすめします。(^^)

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